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地域金融機関の本質的な課題

集中改善期間の評価として、取組みは行ったといえるものの、財務上の効果など成果は十分とはいえなかった。本部の独善で現場の関与が小さかったことも問題であるが、本質が理解されなかったのでは結果も出るはずはなかった。本質を理解するうえで、リレバン機能強化のそもそもの意図は何かを明らかにすることは重要であろう。リレバン機能強化は収益力や財務体力の改善をもたらすものとの解釈も可能であると述べたが、金融庁はなぜそうしたことを地域金融機関に求めなければならなかったのか。結論からいうと、変わらなくてはならないにもかかわらず変わっていないという、地域金融機関の姿にその理由はあったと思われる。

都市銀行など大手行の一九九〇年代後半における変わり具合はすさまじかった。底なし沼のような不良債権処理の連続で体力を失い、自己資本比率維持のために貸し渋りという前代未聞の資産圧縮策を余儀なくされ、さらに巨額の公的資金の注入を受けるに至り、経営の自由度を失った。それまでは世界を相手に勝負しようと海外展開も華やかであったが、これも縮小せざるをえなくなった。また相次ぐ合併再編で二〇行以上あった大手行はメガバンクなどとして四グループ、都市銀行七行に集約されてしまった。ただし、これらは大手行の表面的な変化だ。水面下でも大きな変化があったことは見逃せない。

株式持合い解消の動きから、白紙委任状やシャンシャン総会に代表されるそれまでの安易な資本政策はとれなくなり、本格的な株主重視経営に着手し始めた。いわゆるガバナンスの強化である。執行役員制度や社外取締役の登用も行われるようになった。大手行には実際に口うるさい社外取締役が存在する。多額の与信費用を捻出するためにも、さらに公的資金注入行では経営改善計画を達成するためにも、収益力の改善は急務であり、人員削減や賃金カットが行われた。いまや大手行には年末調整の対象から外れる(年収二〇〇〇万円以占行員が経営陣を含めても数人しかいなくなったというところもあるとのことだ。収益力改善のために収益管理態勢の強化も行われた。

リスク調整後収益による収益管理は大手行では常識になっており、それをペースに現場をコントロールする業績評価もドラスティックな変化を遂げた。クレジットカードなど取引基盤項目の推進強化はトーンを弱め、残高や件数中心の業績評価から、リスク調整後収益中心の業績評価へ変わった。当然ながら現場も以前のような楽はできなくなった。ランクダウンなどが発生するとリスク調整後収益が減るため、貸出金利の引上げ交渉を行い、それがだめならデリバティブ販売で採算確保をねらう。場合によっては回収という手段も辞さないこともあったようだ。

私募債なども発行時にまとまった手数料が入ってくるので、期間損益の乏しい低スプレッド融資からの切替えなどにも使われた。たいした給与も払っていない行員、少ない行員を無駄なく動かすために厳しいムチを振るったのだ。その結果として、金融ビッグバン(一九九七年)以後の大手行のROA(総資産利益率)はコア業務粗利益ベースでもコア業務純益ペースでも大きく改善した。粗利も増やし、経費も削ったという申し分のない結果であった。不良債権処理は金融再生プログラムを待たなければならなかったが、不良債権以外では相当筋肉質な経営になっており、飛躍に向けた土壌は十分にできあかっていた。