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危機意識に欠ける零細企業

年商が一〇億円程度あれば、少しは会社らしくもあり、経営者もそれなりの責任をもった行動をとる。一億~二億円程度の年商であれば、会社という姿にはほど遠く、経営陣もいわゆる父ちゃん社長・母ちゃん専務・兄ちゃん常務といった三ちゃん経営が多くなる。ところが、地域金融機関ではそうした企業も貸出という資金運用の対象にせざるをえないのが現実だ。さもなければ預貸率はさらに下がってしまい、苦しい経営を地域金融機関自身が強いられることになるからだ。

別の言い方をすれば、三ちゃん経営の家族経営的零細企業にも貸し出すというリスクをとらなければ地域金融機関の経営は成り立たないということだ。そのような経営者や企業にとって、リレバン機能強化にあげられた再生ファンド、DIPファイナンスやDES(デット・エクイティ・スワップ)、DDS(デット・デット・スワップ)といった再生手法はいささか高尚にすぎる。再生ファンドの活用は代表者以外の株主が生まれることを意味しており、「株主=代表者」という状態を維持できなくなることについて取引先側に強い嫌悪感が働く。

DESやDDSやDIPファイナンスは法律をベースに自己資本や債務に優先劣後構造を導入するもので、そもそもわかりにくく、家族経営的零細企業の経営者はそれによってカネが借りられるかもしれないとしか思わないだろう。私的整理についても、家族経営的零細企業は一定規模以上の企業とはとらえ方がまったく異なる。減資や経営陣退任など私的整理企業の義務などはそっちのけで、借金棒引きにばかり目がいく。現場でこんなことをいわれた諸氏も少なくないのではないだろうか。「新聞でみたら、お宅(地域金融機関)は債権放棄をしたらしいけど、ウチにもぜひやってくれないかなあ(笑)」と。

地域金融機関から金融庁宛に提出された「リレーションシップバンキングの機能強化計画」の進捗状況報告において、これらの再生手法について「対象なし」とか「検討中」といったコメントが並ぶ地域金融機関が多かったことが、こうした現実を示すよい証拠である。決して地域金融機関がやる気に欠けたからではない。リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループのメンバーには「地域金融機関にも都市銀行同様に会社然とした要再生先が多く存在する」と考えた委員がいたのかもしれない。そうした委員は地域金融機関の現場などみたことがなかったにちがいない。