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地域金融機関の現場ではリレバンは機能せず

現場レベルに目を転じよう。地域金融機関の現場でリレーションシップバンキング(以下、リレバン)はどのように処されていたか。現場はリレバン機能強化に取り組んでいたか。「本質が理解されていない」という金融庁の苦言に対し、現場の諸氏はおおむね納得するのではなかろうか。二〇〇三年八月末に提出された各金融機関の「リレーションシップバンキングの機能強化計画」も本部主導で策定され、再生支援部隊立上げは審査部門、目利き能力開発は人事研修部門に任されていた。営業推進部門はビジネス・マッチング・フェアの開催などに取り組み、現場からのビジネス・マッチングに係る情報の収集に注力していた。

現場は一貫して受け身だったといえる。「忙しくてリレバン機能強化どころではなかった」というのが現場で地域金融の最前線に身を置く諸氏の本音ではなかろうか。加えて、リレバンに伴う新しい取組みに関して、事業再生やビジネス・マッチングの対象となる顧客を引き合わせるなど、本部の手伝いが発生したものの、業績評価などによる「現場に対するご褒美」は皆無か、あってもごくわずかだったようだ。事実、ビジネス・マッチングや経営コンサルティングの取組みを業績評価に反映した地域金融機関は少なかった。

多くの現場では「業績評価に加えてくれないのなら、本部からいわれたことだけをやっておけばリレバンは十分」と受け身の判断をしたはずだ。集中改善期間中、地域金融機関の現場ではリレバンの本質に関する諸説が乱れ飛んだ。圧倒的多数は「リレバンは非正常先を対象としたものである」との説だ。これは二〇〇三年度下期あたりから業績評価にランクアップ先数などが突如盛り込まれたことに起因する。「リレバン機能強化以前と以後の業績評価対象項目の差分はランクアップ先数であるから、リレバンとはランクアップの必要がある非正常先を対象としたものである」と判断されたのだろう。

「大手行に求められたものが不良債権比率の半減であり、地域金融機関はそれに大きな支障があるから、ランクアップにより不良債権の削減を行うのだ」というごく自然な解釈をしたものと思われる。しかし、リレバンは正常先に対して経営コンサルティングを行ったり、ビジネス・マッチングを行ったりすることを排除するものではない。非正常先に比し多数の正常先で収益性の改善を行わなければ、地域金融機関全体の収益性の改善は覚束ない。正常先に対しても同様のサービスを提供し、地域経済を盛り上げて、地域金融機関自らも収益性を高めていく必要がある。