記事一覧

クレジットデリバティブの登場

投資信託の銀行窓口販売は一九九八年一二月に解禁された。地域金融機関でも解禁当初は一部の店舗のみで販売していたり、様子をみたりといったスタンスの地域金融機関もあった。地域住民からのクレームなど、リスクを警戒していたものと思われる。しかし、しばらくすると多くの地域金融機関でも積極的に販売するようになった。窓販解禁により可能となったリスクテイクに踏み込んだのである。投資信託窓口販売解禁以後の地方銀行六四行における資金利益と役務取引等利益である。一九九八年度から二〇〇四年度までの間、資金利益は約二三〇〇億円の減少を示している。ところが、同期間で役務取引等利益は約一二〇〇億円の増加を示している。

もちろん投資信託の販売手数料や信託報酬だけが役務取引等利益ではないが、同期間の四〇%近い役務取引等利益の増加に対する貢献は大きいものと考えられる。営業経費が三〇〇〇億円近く減少しながらも、同期間の業務純益はわずか一六二四億円の増加にとどまっている。投信窓販が認められないという規制が継続した場合、この二一〇〇億円の付加価値は得られないことになるため、地方銀行でさえこのような粗利の維持は困難だったのではなかろうか。「自由化=収益性の低下」を避けるためにも、大蔵省は自己責任や経営判断においてリスクテイクも自由化することにした。

ただし、この段階では、とったリスクを管理する方法は大蔵省が定めていた。このリスク管理方法の一つが、自己資本比率の計算根拠となるリスクウェイトである。国内規制では、四億円の自己資本があれば、最大一〇〇億円まで一般事業会社向け融資の残高(リスクウェイト一○○%)を有することができ、協会保証付融資の残高(リスクウェイト一○%)ではその一〇倍の一〇〇〇億円まで有することができる。国債であれば保有制限は天井なしである。その範囲内であれば自己資本比率は四%を割ることなく、健全な金融機関とみなされるのである。これは大蔵省、その背後にあるBISのバーゼル銀行監督委員会が一九八八年に決定した信用リスクの管理方法である。

しかし、この方法は正しい信用リスク管理としては明らかに違和感がある。一般事業会社向け融資といってもピンからキリまである。電力会社のような超優良企業もあれば、延滞実績や債務超過のある不振企業もある。そこに対する融資の信用リスクが同じだとしているわけである。そうであれば、高い利回りの期待できる不振企業への融資案件を積み上げても、このリスクウェイトルールによれば、金融庁からは信用リスク管理についてのお咎めはなく、収益性も電力会社に貸し出すよりは大きく改善する。収益性は高まるものの、明らかに健全性を損なうはずである。さらに、証券化商品やクレジットデリバティブといった新しい金融商品の登場が事態を複雑にした。