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中小金融機関のリテール戦略の柱「住宅ローン」

中小金融機関のリテール戦略の柱は住宅ローンであった。住宅ローンは地域金融機関を含めた民間以外に住宅金融公庫など政府系金融機関の存在も大きい。一九九八年度以後もフローベースの民間の住宅ローン需要実績は好調であったが、二〇〇四年度についにかげりがみえ始めた。二〇〇〇年度以後好調だったが、直近の二〇〇四年度は前年比三兆円近く需要が減少した。政府系は住宅金融公庫の縮小方針が決定してから、減少の一途をたどっている。そして政府系と民間の合計の住宅資金需要実績は驚愕の現実を示す。二〇〇一年度以降二〇〇〇億~三〇〇〇億円の需要実績しかなく、二〇〇二年度と二〇〇四年度には九〇〇〇億円のマイナスの需要(需要より返済のほうが大きい状態)実績を示している。

政府系金融機関の圧力も弱まったものの、住宅資金需要そのものが二〇〇一年以後急減しているのである。このような状況は過去四半世紀で初めての経験である。住宅金融公庫の肩代わり市場の縮小は現場でも痛感していることだろう。肩代わり以外の住宅資金需要はこのように不安な状況が続くとなれば、限られた需要に対して競争はさらに熾烈化することは目にみえている。リテール戦略では、住宅ローン以外に消費者ローンも目玉商品であった。先行する消費者金融業界に対抗して、同業界に対する提携や審査の迅速化などで地域金融業界もしのぎを削っている。

地域金融機関には消費者ローンの無人契約機を設置するところも少なくなかった。家計部門のフロー減少から、小口の生活資金需要はあるのではないかとの期待もできる。しかし、実態は厳しい。二〇〇二年度以後は一兆円前後の返済超過になっている。マクロデータからは小口の生活資金不足は消費者ローンの利用につなかっていないことが示される。なんでもリボルビング返済のクレジットカードで支払い、小口の資金不足はそのままクレジットカード発行の銀行借入れで補われるという、アメリカのような状態には至らないのだ。

こうしたことから、日本の家計は「資金余剰額の減少=賃金減少」に伴って、住宅ローンも消費者ローンの需要も減少していることがわかる。余分な金利支払を減らして、生活負担を軽くしようとしている家計の姿が垣間みえる。二〇〇五年は夏季ボーナスの支給が増えた企業もあるといわれているが、四半期ベースの資金循環をみても、家計の資金需要改善の兆しは表れていない。余分な金利支払を減らしたいという家計部門に対し、資金利益を稼いでいこうとするのは少し無理があるのではないだろうか。