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金融機関借入額の伸びはマイナス

一九九七年度にはそれまで資金不足であった民間非金融部門はフローベース(その年度だけでの資金余剰の変化)で資金余剰に転じた。この頃から「資金余剰の家計部門から資金不足の民間非金融部門へ資金を仲介する」という資金仲介業務の前提が成立しなくなる。マクロでみたときの事業性資金需要の乏しさが表れている。「それは大企業の話ではないのか。地域金融機関の主力先である中小企業では実情は異なる」という方もいるかもしれない。そこでご覧いただきたい。法人企業統計から算出した資本金一億円未満の企業における金融機関借入額の伸び(前年比)である。

一九九九年度以後、金融機関借入額の伸びはマイナスに転じている。大企業ほどではないにしろ、借入金が減少していることがわかる。現場の努力にもかかわらず、事業性資金の融資を取り巻く環境は厳しいわけだ。もっとも、直近の二〇〇四年度においては民間非金融部門の資金余剰額は一五・三兆円と前年度の半分近くに急減している。しかし、それでも二〇〇一年度の水準(六・四兆円)までは回復していない。二〇〇五年六月一六日付日本経済新聞は大手企業の資金調達が前年比三倍にふくらんだことなどをあげているが、そのほとんどは株式などによるものであり、直接金融の活発化がその要因とされている。

間接金融に恩恵があったと評価するのは早計なようだ。また、資金不足セクターとして一九九四年度頃から政府の存在が大きくなってきた。バブル崩壊以後の相次ぐ財政政策出動が主な原因だ。したがって、このような環境で資金仲介業を展開するとすれば、資金余剰の家計部門や民間非金融部門から資金不足の一般政府部門へ資金を仲介する、つまり、家計や事業者に国債を売ることになる。しかし、国債の窓販手数料は資金収益に遠く及ばないものであり、銀行業の収益源としては心細い。

家計は相変わらず資金余剰セクターであるが、その余剰度合いが一九九八年度頃から変化している。折しも地域金融機関が事業性資金融資の伸び悩みからリテール戦略に目を向け始めた頃である。これは、一九九八年度頃から家計の収益力が低下し始めたことを意味している。バブル崩壊後どの業界でも賃金カットは継続的に行われていたが、ITバブル崩壊以後さらにこの傾向に拍車がかかり、世帯主の賃金カットが多分に影響しているものと思われる。