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地域金融機関の迷走

大手行と同じ期間(一九九七年以後)における地域金融機関のROAの変化を測定すると、ばらつきがみられた。コア業務粗利ベースの増減幅とコア業務純益ベースのそれで大手行同様の改善がみられたのは公的資金の注入を受けた地域金融機関であり、第二地方銀行でも半数程度に改善がみられた。ところが地方銀行においては三分の二が両方とも悪化していた。しかもその三分の二をみると、経済誌などで発表される地方銀行ランキングでつねに上位を占める銀行が名を連ねていたのだ。驚きの結果であった。それらの地方銀行は自己資本比率が高く、健全性は申し分ない。地方銀行ランキングでは自己資本比率などが重視されるため、こうした結果になったのだろう。

しかし、「自己資本比率が高い=収益性が高い」とは限らない。二〇〇三年度決算ベースでみれば、むしろ負の相関がみられる。自己資本比率が高いほど収益性が低い傾向にある。当時は(いまもそうかもしれないが)、「まずは高い自己資本比率」が地域金融機関の悲願であり、地方銀行ランキングの上位を占める地方銀行では、健全性を高めることに専念した結果、収益性は落ちていったと考えられる。こうした地方銀行の業績評価では協会保証付融資の残高目標の配点が大きく、収益性の高いプロパー融資の協会保証付融資への切替えを許容していることも多い。リスクウェイトが一〇%の協会保証付融資を増やせば自己資本比率は改善するが、保証料相当分の得べかりし利益の喪失が発生し、収益性など上がろうはずもない。

業績評価において収益性指標のウェイトが小さければ(最悪は評価がなければ)、現場は嬉々としてプロパー融資の協会保証付融資への切替えを推進してしまう。一九九〇年代後半の貸し渋りの時代には、こうしたことが大手行などで非正常先を対象として悪意をもって行われ、協会保証制度を悪用した自己資本比率のかさ上げ対策として問題になった。一方で地域金融機関は、十分に高い自己資本比率を前提に、正常先でも懸命に切り替えるため、悪意も感じられず、むしろ一途さすら感じてしまう。そしてこうした地域金融機関の特徴は、バケツにためておいた水(有価証券の含み益)でこの収益性低下を補てんし続けていることにもあった。

有価証券の含み益は国内基準行であれば、自己資本比率を悪化させることにはならず、自己資本比率を変えずに利益を捻出できる魔法の杖のようなものであった。健全性の高い一部の地方銀行には、魔法の杖への過剰なまでの依存から、保有債券のうち高クーポンのものが売却により姿を消し、有価証券ポートフォリオに占める株式の割合が高くなっているところも少なくない。その結果、二〇〇二年度末の日経平均八〇〇〇円台のときには減損処理を余儀なくされたところもある。自己資本比率こそ高いものの、減損処理などの突発的損失を発生しやすくするなど、その実態は決して健全とはいえない状態の地方銀行が多かったといえる。