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リレバン機能強化が始まる前の地域金融機関

翻ってリレバン機能強化が始まる前の地域金融機関はどうだったか。いまでこそ大手行に比して不良債権が少ないとはいわれなくなったが、それまでの地域金融機関では不良債権処理に対する取組みによる負担は比較的軽微ですんでいたところが多かった。不良債権が多い地域金融機関では公的資金注入などが行われ、大手行同様大きな変化がみられたものの、それ以外の地域金融機関では資金需要の低迷が最大の懸念事項であったようだ。干ばつ(資金需要低迷)に見舞われている状態にもかかわらず、雨乞いの踊りをするわけでもなく、バケツにためてきた水(有価証券の含み益など)を少しずつ飲みながら、じっと雨が降るのを待っているような地域金融機関が圧倒的多数であった。

わたしが当時地域金融機関の経営陣と話して感じたのも、景気循環を待つがごとく、徳川家康風に「ないのなら、出るまで待とう、資金需要」といった考え方をする人が多いということだった。当時はまだ有価証券含み益に余裕があったからこその考えだったのかもしれない。バケツにためてきた水のおかげで、地域金融機関は表面的には大手行と異なり、健康体とみなされていた。それが原因か定かではないが、金融ビッグバンも凪の如しと、水面下での変化もこれといったものはなかった。収益管理では、以前とさほど変わらない残高・件数を中心とした管理方法が続いた。業績評価も貸出や預かり資産、協会保証付融資などの残高目標と取引基盤の件数目標と事務ミスの減点項目の大きく三つにより構成され、それ以外はそのときどきのキャンペーン項目が加えられる程度である。

一〇~二〇年前と基本は変わっていない。ガバナンスもあまり変わりがない。執行役員制度は取り入れられていったが、経営と執行の分離という制度本来の趣旨とは若干異なるものだった。地元での株式の持合いは続いており、東証株価指数(TOPIX)が発行済株式数をペースとした時価総額指標から持合いなどを除いた浮動株数ベースの時価総額指標に移行すると発表されてから、株式持合いの多い地方銀行株は売り圧力が強くなっている。いまだに株式持合いが続く地方銀行業界を特徴づけた現象といえよう。人員削減や賃金カットは、その度合いは大手行に比べればまだ手ぬるいが、地域金融機関ではしばしば便利な使われ方をしている。

資産査定の検査が入り、与信費用が急増した場合などには、場当たり的であるが株主価値維持のために大胆な賃金カットが行われる。この大胆な賃金カットは大手行も同じである。しかし、地域金融機関ではそうした事態に陥らなくても、減少し続ける資金利益に比例するように、小幅の賃金カットが恒常的に行われていた。場当たり的、小出しの賃金カットの繰返しは、経営施策としてほめられるものではない。賃金をカットされる側にとっても、打止め感のない賃金カットほど酷なものはない。こうしたことが可能なのは、地域金融機関の立脚する基盤はそのほとんどが生活コストの少ない地方にあるからと思われる。地域金融機関の経営陣が、あたかも無限の賃金カットが可能という錯覚に陥った可能性も否定できない。